【市場急変も落ち着き】トランプ氏の関税発言と揺れる為替市場の行方
週明けの為替市場は、再びトランプ前大統領の“関税カード”によって波乱の幕開けとなりました。EUおよびメキシコに対して最大30%の関税を課す可能性があるとの警告に、市場は瞬間的に動揺を見せましたが、欧州要人の火消し対応とともに、徐々に冷静さを取り戻しています。
🌍 トランプ発言が呼んだユーロ売り、反発も限定的
トランプ氏が「交渉がまとまらなければ、8月1日からEU・メキシコ製品に最大30%の関税を課す」との姿勢を打ち出したことで、オセアニア時間帯にはユーロが売られ、ユーロドルは1.1651まで急落。しかし、東京時間には買い戻しが入り、一時は1.1698まで値を戻す場面も見られました。
その後、ロンドン序盤にかけて再び軟化しますが、ドイツ30年債利回りの上昇を受けてユーロは持ち直し、現在は1.16台後半で推移しています。
🇪🇺 欧州の対応:対抗措置も視野に
トランプ発言に対し、EU首脳陣も即座に反応。
- フォンデアライエン欧州委員長:「対話継続を望むが、報復措置の準備は整っている」
- イタリア外相:「210億ユーロ規模の関税リストをすでに用意済み」
- EUのセフコビッチ副委員長は「本日中に米側と協議を行う」と明言し、市場に一時的な安心感をもたらしました。
📆 明日の米CPI:利下げ思惑を左右する分水嶺に
市場の視線はすでに**明日発表される米6月CPI(消費者物価指数)**に集中しています。トランプ氏は「インフレは既に十分抑制されている」と繰り返し発言し、パウエルFRB議長に対する利下げ要求と辞任圧力を強化しています。
もしもCPIが市場予想を下回る結果となれば、利下げ観測が再燃し、ドル売りが強まる展開も考えられます。
🛃 EU通商理事会:対米・対中の通商戦略に注目
現在開催中のEU外相理事会(通商)では、米中との貿易関係が協議されています。とりわけ米国からの関税措置への対応が最大の焦点とされており、進展次第では為替相場への影響も避けられません。
💱 為替市場の主要動向(7月9日昼時点)
💴 ドル円(USD/JPY)
- ドル買いと円買いの両方が交錯し、147円前後で上下に振れる展開。
- 日本国内では、20日に実施される参議院選挙に向けて、与党が過半数を失う可能性が意識され始めており、「悪い円安」への警戒感も。
- 同時に、超長期債利回りの上昇が円売り圧力となる場面も見られています。
💷 ポンド(GBP)
- ロンドン時間の序盤、ポンド売りが優勢。
- ベイリー英中銀総裁が英紙のインタビューで「雇用が想定以上に悪化した場合、利下げ幅が大きくなる可能性」と発言し、利下げ思惑が強まる形に。
- 結果として、ポンドは対ドル・対ユーロ・対円で軟調に推移しています。
📊 本日の経済指標:全体的に注目度は限定的
- 🇮🇳 インド:6月卸売物価指数(WPI)、消費者物価指数(CPI)
- 🇨🇭 スイス:6月生産者輸入価格
- 🇨🇦 カナダ:5月卸売売上高
これらは市場インパクトが限られると見られており、為替相場の主な材料にはなりにくいでしょう。
🎙 本日の主な要人イベント
- ブイチッチ・クロアチア中銀総裁:貿易政策に関連した講演に出席予定
- チポローネECB理事:ウクライナ復興関連の会議に登壇
これらの発言から、金融政策や地政学的スタンスに関するヒントが得られる可能性もあり、市場は注目しています。
✅ 総括:トランプ発言が波紋を広げるも、市場は冷静
一時的な動揺はあったものの、欧州要人の対応や協議進展の見通しが市場を安定化させつつあります。とはいえ、関税交渉の行方や米インフレ指標など、不確実性は依然として高い状況。
特に明日の米CPIは、ドル相場の方向性を左右する決定的な材料となる可能性があるため、慎重な見極めが求められる1日となるでしょう。